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東京地方裁判所 昭和47年(レ)10号 判決

控訴人 高橋久造

被控訴人 東急不動産株式会社

右代表者代表取締役 五島昇

右訴訟代理人弁護士 田宮甫

同 湯本清

同 堤義成

参加人 破産者日本機材工業株式会社破産管財人 大塚喜一郎

右訴訟代理人弁護士 大西昭一郎

同 大熊良臣

主文

原判決を取消す。

本件を足立簡易裁判所に差戻す。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

三  参加請求の趣旨

1  参加人と控訴人および被控訴人との間において原判決別紙目録記載の土地が参加人の所有であることを確認する。

2  控訴人は参加人に対し、前項記載の土地を明渡せ。

3  控訴人は参加人に対し、1項記載の土地につき参加人を所有者とする更正登記手続をせよ。

4  被控訴人は参加人に対し、1項記載の土地につき静岡地方法務局大仁出張所昭和四五年四月二五日受付第四〇五三号をもってなした所有権移転請求権保全仮登記の抹消登記手続をせよ。

5  参加による訴訟費用は、控訴人および被控訴人の負担とする。

四  参加請求の趣旨に対する答弁

(一)  控訴人

参加請求の趣旨と同旨

(二)  被控訴人

参加人の請求を棄却する。

参加による訴訟費用は参加人の負担とする。

第二当事者の主張

一  被控訴人の請求原因事実

原判決事実摘示のとおりであるのでここに引用する。

二  請求原因事実に対する控訴人の認否

1  請求原因(一)項の事実は否認する。

2  同(二)項の事実中、被控訴人主張の仮登記がなされていることは認め、その余の事実は否認する。

3  同(三)項の事実中、控訴人が被控訴人主張の借入金の履行をしないことは認め、その余の事実は不知。

4  同(四)項の事実は認める。

5  同(五)項の事実中、控訴人が原判決別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を占有していることは否認し、その余の事実は不知。

三  参加人の参加請求の原因

1  日本機材工業株式会社は昭和四四年八月六日訴外伊豆観光開発株式会社から同会社所有の本件土地を買い受けその所有権を取得した。

2  ところが控訴人および被控訴人は、本件土地が日本機材工業株式会社の所有であることを争い、本件土地については、控訴人のための所有権移転登記、および被控訴人のため静岡地方法務局大仁出張所昭和四五年四月二五日受付第四〇五三号をもってなした代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全仮登記が存する。

3  控訴人は本件土地を占有している。

4  日本機材工業株式会社は昭和四六年八月六日午前一〇時東京地方裁判所において破産宣告を受け、参加人が被産管財人に選任された。

四  参加請求の原因に対する被控訴人の否認

1  請求原因1項の事実は否認する。本件土地を訴外伊豆観光株式会社から買い受けたのは参加人ではなくて控訴人である。

2  同2ないし4項の各事実はいずれも認める。

五  参加請求の原因に対する控訴人の認否

請求原因事実はいずれもこれを認める。

理由

一  まず職権をもって調査すると、記録によれば次の各事実を認めることができる。

1  被控訴人は、昭和四六年一〇月五日本件原審裁判所に対し控訴人および訴外湯浅金物株式会社(以下「訴外会社」という。)を共同被告として本件訴を提起し、控訴人に対しては昭和四六年一〇月九日本件訴状副本および第一回口頭弁論期日(同月二五日午前一一時)呼出状ならびに答弁書催告状が適式に送達された。

2  ところが、控訴人および訴外会社双方が、第一回口頭弁論期日に出頭しなかったため、右期日は職権により延期され、第二回口頭弁論期日は同年一一月二二日午前一一時と指定され、控訴人に対しては同年同月一日、右第二回口頭弁論期日呼出状が適式に送達された。

3  しかるに、第二回口頭弁論期日にも控訴人が出頭しなかったので、被控訴人は訴状を、訴外会社は答弁書をそれぞれ陳述したのみで、右期日は続行となり、第三回口頭弁論期日は同年一二月二〇日午前一一時と指定されたが、控訴人に対しては右期日の呼出状が送達されなかった。

4  このため控訴人は第三回口頭弁論期日にも出頭しなかったところ、原審裁判所は右期日において控訴人に対する弁論を分離し、即日弁論終結のうえ同年一二月二七日午前一〇時の第四回口頭弁論期日(控訴人に対し同期日の呼出もなされていない。)において控訴人敗訴の原判決を言い渡した。

二  ところで、原判決は、控訴人が適式の呼出を受けながら第一回および第二回口頭弁論期日に出頭せず、かつ答弁書の提出もしないので、第二回口頭弁論期日において、控訴人は被控訴人の主張事実を自白したものとみなすことをその理由としているので、本件につき原判決の依拠する民事訴訟法第一四〇条第一、第三項適用の要件を具備しているかどうかを検討する。

そもそも民事訴訟法第一四〇条第一項所定の擬制自白は、口頭弁論終結時を基準として、その審級の口頭弁論に現われた当事者の陳述その他の態度を総合的に考察して当事者が相手方の主張事実を明らかに争わない場合に法が自白を擬制するものであり、「当事者カ口頭弁論期日ニ出頭セサル場合」(第三項)にはこれに準じて同一の取扱をする趣旨であるから、当事者が口頭弁論終結に至る全期日、すくなくとも相手方の主張事実が提出された期日および弁論終結の期日(実際上それが同一の期日である場合もありうる。)に適式な呼出を受け、欲するならば当該期日に弁論をなしえたことを当然の前提とし、しかもなお当事者が相手方の主張事実を明らかに争わず、または全然期日に出頭しないという口頭弁論における態度を確定することが擬制自白成立の要件をなすのである。したがって、最終口頭弁論期日に当事者を呼出さなかったときは、もし該期日に呼出したならば当事者が出頭し、相手方の主張事実を争ったかもしれないという可能性を残す以上、右当事者の口頭弁論における態度を確定できない次第であり、かかる場合には擬制自白成立の要件を欠くものとしなければならない。

本件において、原審は第三回口頭弁論期日に控訴人を呼出すことなく開廷して弁論を終結したうえ、控訴人は第二回口頭弁論期日において被控訴人の主張事実を自白したものとみなしたのであり、前説示したところによれば、右は民事訴訟法第一四〇条第一、第三項の規定の適用を誤った違法があるとすべきである。

そして、前記認定のような原審における訴訟経過や、当審においては控訴人は被控訴人主張の請求原因事実を争っていることなどの点に鑑み、本件は控訴人、被控訴人間の訴訟と合一に確定すべき参加請求訴訟をもあわせて原審においてなお弁論をなす必要があると考えられるので、同法第三八六条第三八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 蕪山巌 裁判官 井上孝一 大浜恵弘)

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